逆行性射精という病状。
なかなか耳にしないので、男性でも知らない人は多いと思いますが、逆行性射精とは、射精時に、膀胱側へ射精してしまう症状を言います。
本来、射精時に閉じているはずの膀胱の一部（内道尿口）が閉まりきらないために起こります。
主な症状としては、「射精感があっても、精液が出ない」という症状があげられます。
膀胱内に精液が入っても、身体には影響がないのですが、精液が出ないので、子供を望んで性交しても子供ができません。
男性不妊の原因の約2％が、この逆行性射精だそうです。

逆行性射精には、完全に精液が外に出てこない病状と、一部しか出てこない「部分逆行性射精」という二つの病状があるのですが、どちらの場合も、射精後の尿を検査すると、尿の中に精子が存在します。

【逆行性射精の主な症状】
① 射精しても、精液が出ない
② 射精後の尿の中に精子が混ざっている

不妊に悩み、ご自身やパートナーで思い当たる節があれば、専門医に相談してください。

逆行性射精の主な原因は、3つあります。

【1. 糖尿病】
原因の半数を占めるそうです。
糖尿病により交感神経が鈍ると、逆行性射精の症状が出てきます。

【2. 癌手術による脊髄損傷】
腹膜播種など悪性腫瘍の手術により、脊髄を損傷した場合に起こる可能性があります。

【3. 前立腺肥大の後遺症】
前立腺肥大で、経尿道的前立腺切除術を受けた時、その後遺症で起こる場合もあります。

いずれにせよ、予防法は今のところないのですが、逆行性射精は糖尿病や癌の手術、脊髄損傷に付随して起きます。
間接的に予防する手立てはありそうです。

部分逆行性射精の場合、妊娠に向けてまず取り組まれるのが、おそらくタイミング法だと思います。
少しでも外に精液が出てくるのであれば、女性側の排卵時にタイミングを合わせて、自然妊娠を望みます。
と同時に、薬物治療を試みます。
射精時、交感神経を活発にし、内尿道口を閉じさせるため、定期的または、性交渉の前にアモキサピンという薬を内服します。

できれば、薬物療法とタイミング法で自然妊娠を望みたいのですが、すべての人に当てはまるというわけではありません。
薬物療法もタイミング法もダメな場合、自然妊娠は難しくなってきます。
その場合は、

① 精子回収治療
膀胱内に射精された精子を集め、人工授精や体外受精を試みます。
射精後、尿の中では精子は生存できないため、カテーテルを使っていったん膀胱内の尿を抜いた後、尿の代わりにブドウ糖を入れて射精、採取します。

② TESE治療
①の方法で精子が採取できなかった場合、TESE（精巣内精子採取術）を行います。
手術で精子を採取し、人工授精、体外受精、顕微授精へと段階を踏んで試みます。