胞状奇胎とは、子宮内の組織が、ぶどうの房のような外観の“つぶつぶ”になって増殖していく病気です。
ぶどうの房のような外観から、かつては「ぶどうっ子」や「ぶどう子」とも呼ばれていました。
受精卵が子宮内膜に着床して妊娠が成立すると、通常受精卵は、胎児へと変化する「胎芽細胞」と胎盤や卵膜へと変化する「絨毛細胞」に分かれます。
胞状奇胎は、この絨毛細胞だけが異常増殖を起こして、水泡状（つぶつぶ）になり子宮内を覆い尽くしてしまう病気です。
発生頻度は、400～500人に1人の割合。
40歳以上の高齢妊娠後や20歳以下の若年妊娠の後にやや発生率が高くなると言われています。

胞状奇胎には2種類の奇胎があります。
【全胞状奇胎】
受精時に、卵子由来の核（ＤＮＡ）が不活化（死）し、精子由来の核のみが分裂し発生
【部分胞状奇胎】
1つの卵子に2つの精子が侵入し発生（一卵生双生児）

残念ながら、どちらも正常な胎児に発育することはできません（妊娠継続不可）。
原因も、染色体異常、あるいはウイルスによるものではないかと言われてはいますが、はっきりとしたことはわかっていません。
親から子どもへ遺伝する病気でもありませんし、一度胞状奇胎を経験した妊婦が再び罹患することもありません（再罹患率2％）。

受精後、受精卵が子宮内膜に着床し、発達するときに異常が現れるので、妊娠2～4ヶ月ころから症状が出てきます。

主な症状としては以下のものがあげられます。
・ つわりや嘔吐がひどい
・ 腹痛
・ 茶色いおりもの
・ 膣出血
・ むくみ、蛋白尿、高血圧
・ 切迫流産の兆候

妊婦健診のときの超音波検査でも、子宮内に特徴的な像があれば、妊娠2～3ケ月の時期には診断できるようですが、流産との鑑別が困難な場合もあります。
自分ではなかなか判断ができないため、症状が正常の妊娠時より重い場合は、担当医にすぐ相談してください。

流産のときと同じ手術の要領で、胞状奇胎を部分的に摘出します（場合によっては子宮全摘出も）。
妊娠の週数が進めば進むほど、胞状奇胎が多くなって、手術の際に出血のリスクが高くなりますので、胞状奇胎と診断された場合は、できるだけ早く手術を受けた方がいいでしょう。

また手術後は、定期的に血液中のhCGというホルモン値を計測しなくてはなりません。
hCG値が正常値まで下がって来れば、約6ヶ月後には次の妊娠が望めます。
hCG値が順調に下がらない場合は、絨毛癌に移行している可能性があるため、抗がん剤治療が必要となってきます。

絨毛癌は、絨毛細胞が癌化したものを言います。
そのほとんどは妊娠後に発生し、約50％が胞状奇胎の後に発生します。
25％は正常妊娠後、残りの25％は流産や子宮外妊娠の後に発生することが多いようです。
不正出血や下腹部痛、妊娠悪阻などの症状が見られた場合は、すぐに婦人科を受診してください。

絨毛癌は化学療法（抗がん剤）が非常に有効的だそうです。
3～5種類の抗がん剤を組み合わせて治療に当たりますが、1990年以後は絨毛癌の90％以上が治癒しています。
絨毛癌は20～30代の若い人に多く発生するため、治療後の妊娠を希望される場合は、できる限りの化学療法のみで治療を行うので、治療後の妊娠・分娩も期待できるそうです。