言わずと知れた宮沢賢治原作の名作。
今回は藤城清治の文、影絵のものを紹介します。
筆者が幼稚園の頃、この銀河鉄道の夜の影絵の上映会のようなものがありました。
その様子を今でもはっきり思い出すことが出来ます。
★あらすじ
年に一度の星祭。
主人公のジョバンニは、友達のカンパネルラに、川へ行こうと誘われます。
でも、病気のお母さんを抱え働いているジョバンニは、すぐには行くことが出来ず、仕事が終わってから行く、と約束をして、カンパネルラと別れます。
やがて、仕事を終えて町と反対側の丘へとやって来たジョバンニは、星の瞬く空を見上げました。
金剛石をひっくり返したような空。
不思議な声が聞こえます。「銀河ステーション……。銀河ステーション……」
気がつくと、ジョバンニは、カンパネルラと一緒に、夜の銀河鉄道に乗っているのです。
天の川の左の岸に沿ってずっと南の方へ続いている銀河鉄道。
白鳥座、アルビレオの観測所。
二人は進んでいきます。
途中で、何人もの奇妙な乗客に出会います。
サギを捕まえるひげを生やした男、外国で暮らしていたという女の子とその家庭教師の男。
その家庭教師の男は、船に乗って国に帰る途中、氷山にぶつかり、気が付いたら鉄道に乗っていた、と話します。
「救命ボートに乗らなかったの?」
というジョバンニの問いに、男は答えます。
「ボートの数が少なくて、私たちが乗れば誰かが助からない。そう思うと、乗ることが出来なかった」と。
さそり座を通り越し、やがて、ジョバンニとカンパネルラは二人っきりになります。
「本当の幸せってなんだろう」
ジョバンニがカンパネルラに問いかけます。
「僕まだ分からないよ」
カンパネルラが答えます。
やがて二人は綺麗な空の野原に着きます。
「奇麗だね、あれが本当の天上なんだ」とカンパネルラは言いますが、ジョバンニには何も見えません。
気が付くと、車内の座席にカンパネルラの姿はありませんでした。
……夢から覚めたジョバンニは、カンパネルラが友達を救うために川に落ち、亡くなったことを知ります。
見どころは、とにかくきれいな影絵がそのまま絵本になっていること。
それから、「世界全体が幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という賢治の思想あふれる澄み切った世界観です。